仮想通貨の税金について、2017年末の「今」、懸念されること

        
森井じゅん

■執筆者プロフィール 森井じゅん 公認会計士、税理士、ファイナンシャルプランナー、米国ワシントン州公認会計士

経済的事情で高校を中退するも、大検を取得して、アメリカのネバダ州立リノ大学に留学。 帰国後はシングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得する。 その後、森井会計事務所を開設し代表を務め、税理士業務・企業コンサル・監査を務める傍ら、 お金にまつわる執筆やテレビやラジオの情報番組のコメンテーターも務める。 著書「下流予備軍」(イースト新書)2017年8月10日出版。

【2017年は仮想通貨の課税元年】

今年2017年は、いろいろな意味で仮想通貨が大きく動いた一年でした。値動きはもちろんですが、仮想通貨にかかる法整備が少しずつ整ってきました(改正資金決済法の施行)。その結果、今までビットコインなどの仮想通貨を手にしたことがない方が続々と参入してきているようです。

周りを見ていても、ビットコインなど仮想通貨に投資している方の多くは、株式投資やFXの経験がありません。 これまで、投資なんてしたことないし考えたこともなかったという方が、ビットコインなどの仮想通貨のニュースや記事を見て初めて興味をもった、なんていう声も多いです。

一方で、仮想通貨で億単位を稼いだという話も聞くようになりました。 この記事を読んでいる方の中にも億単位の収益を得た、通称「億り人」にいきなりなってしまった、という方もいらっしゃるのでは?

儲かってみて心配になるのが税金です。私自身、ビットコインなどの仮想通貨についての相談を受ける機会が増えました。 現在、公表されているのはタックスアンサーや所得の計算方法であり、税法ではありません。 しかし、国税庁の公式見解であることは確かです。 思いがけない負担に苦しむことのないよう、公式見解や過去の事例を紐解き、現実に起こりうることを知って、対策することが大切です。

【FXブームの悪夢は税金?】

ここで思い出されるのは10年前のFX。 FXは2005年の法改正や円安などの影響で一大ブームになりました。 一般の方がFXで億万長者になるケースも散見されました。 しかしその後、億万長者になったにもかかわらず、税金について知らなかったがために人生の暗闇に突入する人が続出したのです。

当時のFXも現在の仮想通貨と同じ、雑所得という扱いでした。 累進課税なので、所得が増えればその分税率が上がり、利益や損失は年をまたいだ繰り越しや相殺ができません。 その結果、FXにかかる税金が払えなくて破産という事例が大量発生しました。 最終的にFXでも損失を出しているのに、億単位の税金がさらに残ったというケースもあったのです。

以前のFXも、現在の仮想通貨も、一年の間に利益と損失がプラスマイナスゼロという場合には「儲からなかった」で終わることができますが、年を「またいで」利益と損失を出してしまうと、税金の支払いに苦しむ可能性があります。

FXについては税制改正があり、現在、国内FXは雑所得の取り扱いではありません。 仮想通貨についてもゆくゆくは取り扱いが変わるかもしれませんが、当時のFXの税金にかかる悲劇が再現されないよう、皆さんに知っておいてほしいことをお伝えしたいと思います。

【ビットコインの税金 基本のキ:ビットコインの利益は雑所得】

雑所得の金額は、「雑所得にかかる総収入金額-(マイナス)必要経費」として計算されます。 所得により税率がかわってきますが、最高45%の税率です。さらに、住民税が一律10%でかかってきます。 利益が大きい場合には半分以上は税金だと考えなくてはいけません。また所得は保険料などにも影響するので注意が必要です。

また、雑所得は一年ごとの計算です。ある年に損失が出て、次の年に利益が出ても、損失を繰り越すことはできません。逆もしかりです。

《 例 》 1,000万円で買ったビットコイン、12月末で1億円の含み益が出ていたとします。 12月31日に利益確定のために売却、翌日1月1日に同じものを同額で買ったとします。12月31日の売却で5,000万円以上の所得税・住民税が発生します。 そして、2月に大暴落し、1,000万円に戻ってしまいました。とりあえず税金を払うためにこのビットコインも手放したとします。

このとき、5,000万円の税金に対し、準備できたのは1,000万円です。残りの4,000万円の税金をどうやって払えばいいのでしょう?

実は、税制上はどうしようもないのです。

この一連の取引で、全体として利益は出ていません。1,000万円で取得したビットコインを1,000万円で売っただけです。しかし、年をまたいで利益と損失を出したことで、5,000万円の税金を負ってしまったのです。

【焦って利益確定しないで!】

損失の確定も難しいですが、利益の確定というのも難しいポイントです。 取引には、一度得た利益を失いたくない、損失は確定したくないという人間心理が影響します。 認知心理学的に言えば、利益確定は早めになり、損失の確定は遅くなる傾向があるのです。

年末に一度精算することで、確定申告の計算も楽になることがありますので、今月末、利益確定をする方が多いかもしれません。しかし、利益を確定させてしまうと税金が確定してしまいます。

ですので、ポイントは「売却せず塩漬けにしていれば税金は発生しない」ことです。もしくは利益を確定させるときに、塩漬けになっている含み損があれば、損失の確定とぶつける事で翌年の税金に苦しむことがない対策が可能です。

ビットコインの取引スタイルは人それぞれです。ただし、利益を確定させるのであれば、焦らず、どのような対策が可能か、どのように納税資金を準備するのかをしっかり考えるようにしてくださいね。

【申告が必要な人は?】

仮想通貨で利益が出た人全員申告を行う必要があります。 「給与以外の所得が20万円以下の場合は申告不要」という言葉をよく見かけますが、それは所得税の確定申告についての話です。所得税は申告不要でも、住民税の申告は必要です。

つまり、仮想通貨で利益が出た方は、その利益が少額であっても税金は他人事ではありません。

【知らないでは済まされない】

利益が出れば税金もついてきます。知らなかったでは済まされません。 申告すべきなのに申告しなかった場合や過少に申告した場合には様々な罰則があります。 FXの悲劇の時にも、知らずに脱税になってしまっている方も少なくありませんでした。税金は自己破産でも免責されないものです。逃げられるものではないのです。

税金についての理解や対策は、利益が上がってからではなく、上がる前からきちんと行っていく必要があります。現在のご自身の状況や今後の方針について、税金を含めて考えていくことが大切です。

■仮想通貨の税金セミナー

さて、混乱の見られるビットコインまわりの税金についてセミナーを、2月の上旬にビットポイント主催で行います。どういう状況で税金がかかってくるのか、どういう対策があるのか、などなど詳しくお話していきたいと思います。ビットポイントのホームページで告知を行いますので、ホームページをチェックしていてくださいね。

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